矯正治療の限界とリスク


矯正治療の限界

矯正治療における限界を患者様に知っていただき、ご協力いただくことで、

より良い治療結果を生み出すことができると考えています。

 

01 歯の移動

矯正治療では,歯を骨のないところに移動することはできません。

歯槽骨がやせている場合や、加齢などにより硬くなっている場合、

歯根が曲がっている場合や、歯根と歯槽骨が癒着している場合も、

歯の移動は困難です。

歯の移動には固定源が必要であり、固定源がない場合や不安定な場合も

歯の移動は困難であるため、治療目標の変更や治療の中止が必要となります。

 

02 顎骨の成長

矯正治療だけでは、顎骨の成長を完全に制御することは不可能です。

成長により顎骨の前後的、上下的、側方的なズレが大きくなると、

歯の移動のみで機能的な歯ならびを得ることができなくなります。

この場合、治療を中止するか、

外科的処置(顎骨を切る手術など)を併用する治療へ移行することになります。

 

03 後戻り

顎骨は、周囲の軟組織の力、呼吸、姿勢などの影響を受けて成長し、

維持されています。

歯も、舌、唇、頬、咀嚼筋など周囲の軟組織の力の影響を受けて

バランスがとれた位置に並んでいます。

矯正治療で顎骨や歯を新しい位置に移動すると、

周囲の軟組織の力によって元の位置に戻されようとします。

この顎骨と歯の後戻りを防ぐためには、保定装置を指示通り使用するだけでなく、

顎骨と歯を元の悪い位置に戻そうとする力を

新しい良い位置で安定させる力に変化させる必要があります。

形だけ変わっても、力のコントロールができなければ安定しません。

後戻りの程度によっては、再治療が必要になります。

 

矯正治療のリスク

内科や外科などの治療と同じように、矯正治療にもいくつかのリスクがあります。

これらの事を患者様に知っていただき、早期に対応させていただくことで,

リスクの軽減をはかりたいと考えています。

 

01 歯の痛み

装置を装着した夜または、翌朝から10日間程度、歯が浮いたように感じ、

話したり食事をしたりすると歯が痛む(歯根膜炎を起こす)ことがあります。

また、歯の移動中に神経が痛む(歯髄炎を起こす)ことがあります。

ごくまれに歯髄が失活する(歯髄壊死を起こす)ことがあります。

 

02 歯の脱灰、齲蝕、歯周病

装置を装着中は、装置の周囲などに食べ物や歯垢が付着しやすくなります。

そのままにすると、歯の脱灰、齲蝕、歯周病をひき起こす危険性があります。

 

03 口内炎

装置が頬粘膜、口唇、舌にあたって口内炎ができることがあります。

 

04 歯肉退縮

治療中に歯肉がさがり、歯根の一部が露出することがあります。

こみあっていた歯を矯正治療できれいにならべると、

歯と歯の間に三角形の隙間(ブラックトライアングル)ができることがあります。

 

05 歯根吸収

治療中に歯根が短くなることがあります。

健康な口腔環境であれば問題ありませんが、

将来、歯周病を起こすと歯の寿命に影響することがあります。

 

06 顎関節症

治療中に、顎関節が痛む、顎がなる、顎や首の筋肉がこわばる・痛む、

口が開きにくいなどの症状が起こることがあります。

 

07 発音障害

装置が舌にあたる場合、サ行、タ行、ラ行の発音がしにくくなることがあります。

 

これらの中には、元にもどるものともどらないものがあります。

治療中に気になることや、おかしいなと思うことがございましたら、

何なりとスタッフにお尋ねください。